2022年5月4日水曜日

糸魚川~静岡構造線上でわしも考えた(大糸線JR西日本区間南下大作戦)

大糸線(おおいとせん)、松本~信濃大町~糸魚川をつなぐローカル線。
般的に鉄道の路線名は京葉線や釧網本線の様に片側の地名の読みに関係なく音読みされるが、大糸線は例外的に両方の漢字を訓読みする(他には米坂線の例が有る)。何となく響きが優しいのはそのせいだろう。
鉄当時はバブルにスキーブーム、沿線の白馬、穂高、上高地、志賀と言った北アルプス・ブランドに加え、高質パウダースノーのスキー場や高級別荘地を潤沢に持つ大糸線は輝きを放っていた。若者は「イッパ栂池」「ミダラ尾高原」へ向かい、臨時特急あずさ銀嶺も走った。

しかし、バブルとスキーブームの終焉は大糸線にも暗い影を落とす。

JR分割時に糸魚川駅から35.1km、松本駅から70.1kmの南小谷(みなみおたり)駅に「38度線」が引かれ、JR西が北側を、東が南側を治めた。
南北分割統治は、かの半島の如く格差を生んだ。
JR西の北側はキム一族の北と同じように未だに非電化、気動車のキハ120形が1両ないし2両でコトコトと走っている。今日時点で南小谷駅発糸魚川方面の列車は1日7本しかない。
かたやJR東の南側は何と新宿から特急あずさが1往復、南小谷駅まで乗り入れている。南小谷駅から松本方面は日に12本ある。電車なので速度も速い。まさに陰と陽である。

国鉄時代の大糸線が持っていたブランドはすべて南側にある。JR東から見れば大糸線は南小谷駅までで充分なのだ。

に時は残酷だ。
北陸新幹線が延伸し糸魚川に新幹線駅が出来ると在来線は3セク化、えちごトキめき鉄道になり大糸線は糸魚川駅でJR西日本在来線との接続を失った。盲腸線どころか、JR西日本の飛び地になった。
そこに過日の「17路線、30区間のJR西日本の公表」。

新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年度に輸送密度が2,000人未満だったJR西日本の17路線、30区間、即ち廃線候補である。大糸線はその中で営業係数 2,693の堂々5位!
ちなみに20年度の輸送密度は50人、営業係数 2,693とは「100円の収入を得るのに2,693円掛かる」。もう断末魔の大糸線(北)。

道の廃線判断には、併行道路の整備状況も影響する。これは走ってみないとわからない。そう言うわけで一念発起、糸魚川駅から南小谷駅まで全駅間を走って点検を行うことにした。
まずは糸魚川駅の次、姫川駅。大糸線は清冽なる一級河川である姫川沿いを走るので、その名も姫川駅とは期待が(?)持てそうだ。
まずは糸魚川駅からスタート
姫川駅に何も期待していたわけでは有りませんが、ただの乗降場でした。糸魚川駅から3.2km
お次は頸城大野駅。頸城(くびき)は上越地方の地方名。乗客にはまだ出会いません。糸魚川駅から5.1km

の根知駅へ行く前にここでフォッサマグナパークを見物。フォッサマグナの西側「糸魚川~静岡構造線」のほぼ線上を走るのが大糸線。ここフォッサマグナパークは露天掘りと言うか、掘り出した露頭が見られる場所なんだが、大糸線沿線でフォッサマグナ系のスポットはここだけ。もっとも地震を引き起こす断層でもあるわけだから、大糸線には氾濫する姫川と並んで天敵か
フォッサマグナ露頭の遠景。正直なところ崩れちゃってて良くわかりませんね

根知駅。こんなもんでしょう。まだ桜が咲いています。糸魚川駅から10.0km

小滝駅。ここは渋い。
黒部川電力 姫川第六発電所の付属と言うか片隅に鎮座し姫川の轟音がホームに響く、
車で行ける秘境駅。
乗車人数は2005年から2020年まで一貫して2人/日。
発電所の決まった誰かが乗っているんだろうか..糸魚川駅から13.6km

小滝駅から平岩駅まではスノーシェードの半トンネルが延々と続く。大型の通行も多い。併行道路の整備云々より前に、人々は大糸線でなく、クルマを使っている
平岩駅。ここも渋い。小滝駅から車道で8kmほど離れている。
駅前には酒屋もあり地酒「謙信」の看板が有った。
2020年の乗車人数は「1人/日」だ。糸魚川駅から20.4km

閑話休題、姫川である。
流程たった60kmに、
  • 姫川第二ダム
  • 姫川第三ダム
  • 横川第二発電所
  • 大所川発電所
  • 姫川第六発電所
  • 姫川第七発電所
水量が豊富な故に資源利用に喰い尽くされた川。流れを堰き止める発電所を見るたびに切り刻まれるような姫川が不憫でならなかった
[おまけ]平岩駅から見えた白馬大仏。優しいお顔をされています

次は北小谷駅。自転車のガイジンカップルが昼メシを喰ってた。糸魚川駅から26.9km

ここもなんてことは無い中土駅。次は北側の終点南小谷駅。
ここまでに乗客との邂逅はゼロ。
ヒトと逢ったのも、北小谷駅のガイジンカップルのみ。糸魚川駅から31.3km

そしてJR西日本区間の終点、南小谷駅。糸魚川駅から35.3km。
辿って来た路線は塩の道でも有ります。沿道では塩の道祭りをやっていました

そう言うわけで35.3km、中間7駅の探訪を完了。

段鉄道を使っていない住民が、鉄道を無くすなと文句を言う。鉄道=ノスタルジー、もしくは高校生の通学用。後者がスクールバスや一般バスで代替出来るなら、残るは単に前者しかない。1両のキハ120形を毎回満席にしたって赤字だろうし、もはや到底そんなことは出来やしない。
糸魚川駅から辿って来た上記の各駅だって人も住まない僻地に点在するだけなら、病院や役場に近いバス道路の方が相当に合理的だ。とは言え姫川駅周辺までの中心部を除けば道路は崖沿いを走り、スノーシェード(洞門)、トンネルと発電所が大半で住民が住んだり立ち寄る場所など無く、次の商業施設「道の駅小谷」(北小谷駅の近く)までの約25kmはバスに代わったらノンストップになりそうな感じだ。その後も南小谷駅までは道の駅白馬しか無い。
は姫川駅~南小谷駅間には南小谷駅近くに小谷町役場が有るのみで、病院も交番も高校もショッピングセンターも何も無い。これでは代替バスも要らないだろう。糸魚川駅から頸城大野駅位までをカバーするコミュニティバスと、既存の小谷町内バスだけで充分だ。

道の廃線話はイコール全線のバス代替議論になるが、かようにここに於いてはそんな問題では無い。いっそのこと北側か南側に退避させて頸城大野~北小谷間の住人を無人にする、そんなコンパクトシティを試すのが線路無き後の大糸線(北)区間の姿では無いか、等と考えさせられた糸魚川~静岡構造線上で有った。
現実として、対象は数家族しか居ないのではないかな。姫川温泉郷の旅館従業員も、大糸線は使っていないだろうし。

ホントは残って欲しいですけどね、大糸線全線として。

2022年5月2日(火)訪問
(了)

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