奇跡なのか椿事なのか、過去3回をすべて快晴で切り抜けている我ら3名の次の課題は「第4回青少年強化合宿」即ち「耐寒キャンプ」。今回の日程は「オリオン座流星群極大日」とバッチリ合っている。今回こそ晴れなければならない。
今回のキャンプ地は前回同様の入笠山JAハウス。
10月後半の入笠牧場は既に初冬で、前回来た時は放牧されていた種牛たちも早々に山を下りている。青々としていた木々も紅葉し葉を落としている。行きがけにキノコを探してみたが、もうあるはずも無かった。ここら辺に沢山生えるイグチタケは美味で高級品なんだが、さすがに今回は時期が遅い。
寒々とした木々は着物の袖のようにサルオガセをまとっていて、まるでハロウィンのお化けの行進のようだ。知らずに夜、懐中電灯で見たら怖かろう。
南アルプスの北端、中央道諏訪南インターの南西に位置する入笠山へは中央道府中スマートIC至近の我が家からなら渋滞を避ければ2時間半で着く距離だが、今回は勝手が違った。同行の2人(ドレイ長と奴隷)の住まいが横浜なので有る。隊長はふたりのピックアップの為に止む無く横浜(と言っても鶴見)へ向かった。府中から鶴見へ、多摩川沿いを下って1時間。06:30にふたりを乗せて車を西進させ、横浜町田ICから東名に乗る。
東名は既に断続渋滞となっていて、御殿場までのろのろ運転を強いられる。
入笠山へ入るには中央道に乗らなければならないのだが、ルート選択が微妙だ。
海老名から圏央道では中央道合流で渋滞し、その先には小仏トンネル渋滞もある。これはパス。
御殿場から東富士道路は、山中湖までは順調に行けるだろうが河口湖ICから中央道大月ではなんだか戻るような感じだし(ホントはきっとこれが一番早かった)、河口湖や本栖湖から北上する下道も時間が掛かりそうでこれもパス。
結局は渋滞を抜けた御殿場から新東名に入り、新富士ICから中部横断道をひたすら北上するルートを選ばざるを得なかった。
まだ走ったことは無かったので初踏破、それは良いのだがこの道はひたすらに長い。そしてほとんどの区間が対面通行で道幅が狭く、スピードを出せない。確かに名阪から甲府(を経て佐久等)へのアクセスは増したのだろうがいかんせんかったるい。山梨県側で大雪でも降ればこの道路は麻痺してしまうだろう、フルスペックで開通出来なかったのだろうか、等と思案しつつもこの行程の白眉は全長4,999㍍と笹子トンネルよりも長い樽峠トンネル(たるとうげトンネル)。トンネル入口案内板の記載は5,000㍍と有るが規格上は4,999㍍、その理由はトンネルが5,000㍍を超えるとタンクローリー車など危険車が通行出来なくなる為だ。たった1㍍の差。掘った方々の苦労が忍ばれる4,999㍍である。
中部横断道を走る時間は怠惰に過ぎ、中央道が近づくと次の渋滞候補は「須玉~韮崎の車線規制」である。この工事規制はもう何ヶ月もやっている。せっかくここまで遠回りして来たのにここでまた渋滞にはまりたくない。中央道と交わる双葉ジャンクションでは進路を東京方面に取り、双葉SAでトイレ休憩の後、双葉SAスマート出口から下界に降りて、釜無川沿いに20号を西進する。
今回の入笠山には、なかなか着かない。タイムスケジュールは今のところ2時間落ちだ。
既に初冬の20号沿いの車窓は綺麗だ、標高を増すと紅葉が色づく。
韮崎、冨士見を越して青柳の先で右折。山に入る前に茅野市郊外の釣り堀でニジマスを釣らなければならない。
やがて着いたのは川口屋。釣り堀の最新情報はリンクのクチコミを参照して下さい。
12:30釣り堀着。何と鶴見からここまで6時間掛かっている!
駐車場に車を停めて、釣り竿3本に仕掛けを作る。受付に行く。と、何と釣り竿は持ち込み禁止!(´;ω;`)
貸し竿(1本200円)にエサのイクラ(1パック550円)を買って12:50から釣り開始。1時間ひとり1,000円。釣る前に10匹くらいかな?バケツで放流してくれる。
晩飯塩焼き用ノルマはひとり2匹の計6匹だ。
釣り券 |
今日は2023年10月21日(土)、既に水温低く魚の活性は鈍い。コーンエサにはまるで喰いつかない。やがて陽が出て来たので魚を見ながら釣ると釣りやすくなり、イクラエサで何とか計6匹釣った。一番でかいのは25cm有り、迫力満点だ
晩飯の塩焼き。一番左が、ドレイ長が釣った最大サイズ |
はらわたを抜いて貰うのは1匹10円と手間賃にもならない申し訳無さ。時刻は14時。買い出しのスーパーでゲットした冷却用氷にニジマスを埋める。昼飯は適当に車内で済ます。14:50頃、クルマはようやく茅野市街を抜けて山へ向かう。これ以上遅くなると設営中に暗くなる。それにしても時間が掛かってしまった、鶴見からもう8時間以上経っている。
クルマは諏訪大社 上社 前宮の前を通り、高遠スケッチ街道へ。杖突峠を越えたところにある晴ヶ峰ゴルフ場を左折。この道が千代田湖に通じているらしい。長いこと入笠牧場へ通っているがこのアプローチルートは初めてだ。
やがて千代田湖、湖畔のキャンプ場は混んでいる。
ここまで来ればこの先は前回通った道。牧場も近い。
途中でキノコを探すが前述の通り空振り。9月までが限度の様だ。
急な右カーブにマユミの木が観えると牧場入口が近づく。
いつ来ても変わらないJAハウスキャンプ場に入る。キャンプ客は誰もいない。管理人のM澤さんも仕事に出ているようでホントに誰もいない。いつもの場所に黙ってテントを張り出すと、仕事から一旦M澤さんが戻って来られた。挨拶して設営を再開。やがてM澤さんも今日の仕事終了、何でもチェーンソーが噛んでさっきは代わりを取りに戻ったそうだ。
今回も歓迎して貰った、鹿肉を頂けることになった、貰って来ると柔らかい。冷凍せず熟成させたバンビ(小鹿)の腿(もも)肉だそうだ。有り難く頂きます!
バンビちゃんの片腿は2kg強 |
3人でテント2張と小さなマーキー1個。焚き火台で薪と炭を焼き始めて早速晩飯の準備に移る、寒さが増して来る、そして急に暗くなる。
先日の飲み会で焼肉をしこたま喰ったと言う隊長の個人的な事情から、今日のメインメニューは白湯仕立て鶏鍋と相成った。鹿の腿肉をもらえたので今夜はニジマスに鶏、鹿と豪華にたいらげる宴になる。
空にはまだ月が観えているが間もなく西の空に沈む。オリオン座流星群の極大は明日未明だが、月明かりが無くなれば早い時間からビュンビュン観え出すに違いない。
ニジマスに串を打って焼く。
バンビの腿肉に切れ目を入れ塩コショウを振ってまずはフライパンで少し蒸し焼きにしてみる。30cm径のフライパンに少々骨が飛び出した。
まずは蒸し焼きから開始 |
やがて肉の中も温まったようなので、炭火焼に移す。この、フライパンでのワン・プロセスが効いた。生焼けにならずに、柔らかいままの炭火焼が出来た
これは美味そうに仕上がったゾ!! |
何とも贅沢、至福の入笠ナイト! |
管理人(ご本人曰く、牛追い)のM沢さんが暖かそうなミレーのダウンジャケットを着て、テントサイトに来られた。ホットウィスキーを酌み交わし、法華道(ほっけみち*1)の話を聴く。この頃は御所平峠のお地蔵さんの脇で座禅を組まれているそうだから仙人にもうだいぶ近づかれた。御年75歳で圧倒的な気力と体力の持ち主。ご隠居はまだまだまだまだ先の様だ。
*1 法華道は、後に身延山法主となった日朝上人が7日間に渡って説法を行ったとされる高座岩などの霊跡をはじめ、多くの日蓮宗僧侶が身延山から伊那地方への布教に使った道と言われる古道。甲斐信濃国境(今の長野県富士見町)から南アルプス北端の入笠山を抜けて伊那路へ至っている
頃合いを見てタープ下から星空の下へ出ると満天の星空。今回も晴れキャンプは成就した!
ブルーシートを敷いて寝転がる。寒いのは末端と首元なので、末端の足の裏には使い捨てカイロを貼り、手袋の中にも入れる。ニット帽とシュラフをかぶってしばらく天を見つめるが、「流星群」と言うほどには降らない。せいぜい何個の流星は、好天の入笠のいつもの星空と変わらない。
やがて飽きて体内燃焼アルコール注入に戻り、しこたまの飲食ののち「明け方起きて寒さに耐えられるようならまたその時観よう」、と言うことにして消灯。テントに入る前に少しだけタープ下を片付ける。
尿意に堪え切れず起きた真夜中の星空はそれは綺麗だった。しかし気温は氷点下、再度ブルーシートに寝そべる気力はなく、車のフロントガラスも凍り付いていたので車内から観るのも諦めた。眠たかったのでテントに戻って再び寝る。
明るくなったのでのっそりと起きると、3cmほど鍋に残った水はきっちり凍っていた。
車のダッシュボードの温度計を見るとマイナス6℃だった。今年一番冷え込んだ朝だった。
寒くて身体がなかなか動かないが、のそりのそりとカセットコンロに火を点けお湯を沸かし、のろのろと朝飯の支度に掛かる。
今年初めて凍り付いた我がセレナ |
クーラーボックスに入れておいた缶ビールは凍っていなかったが、開けて飲み始めたらすぐにシャリシャリのシャーベット状になった。寒い中で凍ったビールを呑むのはかなりの試練、ほぼ拷問に等しかった。
鹿もも肉は昨日喰い尽くした。鶏鍋は温め直して喰う、ちょうど3人分残っている。まず昼飯用のバーガー作りから始める。いつもはバゲットサンドなのだが、昨日買い出ししたスーパーでは欠品で、代わりに特売のバンズを買って来たのだ。バンズの両面をフライパンで軽く焼く。チューブバターを塗っておく。焼いているすきにトマト、きゅうりと魚肉ソーセージをスライスし、塩、マヨネーズを加えてバンズで挟む。ソーセージにはケチャップも塗る。これら作業は衛生的にラップの上で行われ、完成したらその上からホイルでくるむ。3個作って昼飯バーガーは一丁上がり。
バーガーに挟んだハロウィン・トマト |
この間に、朝飯用のチンごはん3個を湯煎している。同じ鍋で卵も3個ゆでる。ゆで卵も昼飯用だ。次にフライパンに交代し、昨日のニジマス釣りえさの残りのバターコーンとスクランブルエッグ。最後に、予備用に買っておいた味付けカルビを焼いて豪華な朝飯の完成。
陽が射し始めてようやく暖かくなり始める。起きた時よりも、起きてから1時間くらい(朝7時頃)が一番寒かった。
やがて外に立って見渡せば、今朝の快晴はもの凄い。まさに雲ひとつない。
キャンプのたびにこの快晴の僥倖が、いつまでも続いてくれると良いのだが。
放牧の牛も去ってしまった寂しい牧場だが、御覧の通りの快晴! |
朝飯の後は撤収である。奴隷の食器洗いはようやくそれなりになってきた。しかし洗ったら日なたに置いて乾かす、と言った基礎知識がない。洗ったら干したり乾かしたり拭いたりするのは当たり前だと思うんだがな..ともかくまだ奴隷を鍛える余地は相当に有ると言うことだ。
快晴の牧場キャンプ場でフライシートを干す。この小屋も40年以上昔からそのまま。管理人のM澤さんは今朝はお休みなのか、まだ出て来られていない |
撤収の後は代金精算と帰路下山の通行証(入笠林道はマイカー規制をやっている)を受け取って、M澤さんとまたしばしのさらば。今年の一般営業は11/20頃までだそうだ、プライベートでは例年、年越しキャンパーのお相手もしているとのことで誠にご苦労様です。
帰路はのんびりと、快晴の景色と紅葉を堪能しながら下ることにした。キャンプ場の出発は予定通り9時半。
高山帯なので紅葉する木々は多くないが、紅葉自体はちょうど見頃。空気も清廉で、山頂を目指すには一番良い時期のようだ |
ビューポイントからの八ヶ岳。ホントに好天!! |
さすがの富士見町、富士山も綺麗。富士山の下の方にだけ、雲海が拡がっている |
入笠山を降りてからは小淵沢ICで中央道に乗り、八ヶ岳PAでトイレ休憩とごみ捨て。その後は双葉ジャンクションを右へ、昨日と同じ中部横断道へ入り、
今回の最終目的地は何と身延山久遠寺! 法華道つながりの本日のゴールです! |
身延山は開創750年と有るから、1273年頃に日蓮上人が入笠の高座岩で修行の後、ここへ来られたと言うことか。調べると「鎌倉時代、文永10年」だそうです |
身延山のこの山奥を先人たちが一体どうやって拓いたのか、誠に興味の尽きないところであります。
身延まんじゅう購入後は身延山ICから昨日通った高速を逆トレース。ガソリン残量が怪しくなって厚木で一般道へ降り、給油の後、横浜から首都高で鶴見。誠に移動時間が掛かった今回でしたが快晴と言う最高のごちそうを頂いた素晴らしいキャンプでした。
入笠山とM澤管理人に感謝!
2023.10.21~22
入笠JA牧場キャンプ場にて
(了)
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